時空を超えてⅡ

.

先週、1年ぶりにピアノを調律していただました。

何となく重たく感じる鍵盤がありましたので、そのことをお伝えして作業が

始まりました。

数時間後、こんなものが挟まってましたと渡してくださったのは、黄色い三角の

板状の磁石。

「にぶ」とひらがなで名前が書いてありました。

小学校低学年算数の授業で使うアレですね。

なんとまあ!

驚きました。

なぜなら3人の子供たちは、とうに成人しており家を出ております。

ピアノを習っていたのは小学生の時ですから、かれこれ10年以上は経っています。

しかも、去年も調律して頂いているのですから、どこにどう潜んでいたのか

不思議でした。

ですが、この話をピアノの先生にしたところ、謎が解けました。

やはりこの三角の磁石は子供たちが弾いていたころになんらかの弾みで鍵盤から

滑り込んだのでしょう。

そして、彼らは成長し、いつしかピアノは忘れられていき、置物と化していました。

ところがです。

去年からこのピアノに夢中になり、毎日毎日練習する人物が現れたのです。

それまで片隅で静かにしていた磁石ですが、連日の振動に乗っかってとうとう

姿を現したのではないかと。

その人物とは。。。。

「私」

です。

置物と化したピアノを調律した後、

「良いピアノですね。引退させるにはまだ早いですよ。」

と言う調律師の方の言葉が私の背中を強く押してくださいました。

あれから1年。

毎晩10時になるとピアノに向かいます。

もちろん消音での練習ですが、至福の時です。

ピアノがタイムマシンとなって、幼い子供達と出会ったような気がしました。

三角の磁石は大切に取っています。

また一つ宝物が増えました。

次回の更新は12日(火)です。お楽しみに!